アンプレヤブルとは?ゴルフルールの基本を理解しよう
「木の根元にボールが止まってしまった…」
「バックスイングが全く取れない状況で、どうすればいいんだろう?」
ゴルフをプレーしていると、こんな状況に遭遇したことがある方も多いのではないでしょうか。そんなとき、救世主となるのが「アンプレヤブル」というルールです。アンプレヤブルとは、プレーヤー自身が「打てない」と判断したときに、罰打を払ってボールを適切な位置に移動することができるゴルフの公式ルールなのです。
打とうと思えば打てるけどケガやクラブの損傷が心配な場合や、普通に打つと何打も費やしてしまいそうな状況でも活用できます。ルールブックにもしっかりと記載されている公式ルールなので、マナー違反を心配する必要はありません。
アンプレヤブルは単なる救済措置ではなく、スコアを守るための戦略的な選択肢でもあります。
この記事では、アンプレヤブルの正しい判断基準や処置方法、2023年に改定されたルールの変更点まで、初心者からベテランまで役立つ情報を徹底解説します。
アンプレヤブルが適用される主な状況とは?

バックスイングが取れない?2023年のルール改定:後方線上救済の変更点
「アンプレヤブルって、どんな状況で使えるの?」
アンプレヤブルは、主に以下のような状況で適用されることが多いです。実際のゴルフコースでは、様々な障害物や地形の変化によって、思わぬ場所にボールが止まることがあります。
木の根元にボールが止まってしまった場合、深いラフの中に埋もれてしまった場合、バックスイングが物理的に取れない場合など、通常のスイングが困難な状況でアンプレヤブルを宣言することができます。

深いラフに埋もれたゴルフボールの様子
これらの状況では、無理にスイングをするとクラブが折れたり、数打では脱出できなかったりするリスクがあります。また、無理に打つこと自体がプレーを遅らせ、周囲への迷惑にもつながりかねません。
重要なのは、アンプレヤブルは絶対に打てない状態でなくても、自分がプレー不能だと判断すれば適用できるということです。
どうですか?思ったより柔軟なルールだと感じませんか?
ただし、明らかに打てるのにあえて救済を選んで有利にしようとする行為は、マナー違反と受け取られる可能性があるため注意が必要です。アンプレヤブルはスコアを有利に操作するための手段ではなく、フェアで安全なプレーを維持するためのルールであることを忘れないようにしましょう。
バンカー内でもアンプレヤブルは適用可能
「バンカーに入ってしまったけど、アゴが高くて出せそうにない…」
バンカー内でもアンプレヤブルは適用可能です。特にバンカーの縁(アゴ)の下にボールが刺さってしまったり、バンカー内の急斜面にボールが止まったりした場合、通常のバンカーショットが非常に困難になることがあります。
ただし、バンカー内でアンプレヤブルを選ぶときは、「バンカー内にとどまるか、外に出すか」でペナルティの重さが変わります。バンカーに対する苦手意識や、バンカーの形状、プレーの進行スピードなどを考慮して、どの選択肢を選ぶのがベストかを判断しましょう。

バンカーの縁に埋まったゴルフボールの困難な状況
バンカーからの救済処置については、後ほど詳しく解説します。特に2019年に改正されたルールにより、バンカーからの救済オプションが増えたので、その点もしっかりと押さえておきましょう。
アンプレヤブルの救済処置:3つの選択肢
アンプレヤブルを宣言した後、プレーヤーは状況に応じて以下の処置方法から選ぶことができます。それぞれの選択肢にはメリット・デメリットがあるので、状況に応じて最適な方法を選びましょう。
1. 元の位置に戻る(1打罰)
最初の選択肢は、直前にボールを打った地点に戻って再度プレーする方法です。これは「ストロークと距離の救済」とも呼ばれます。
この救済方法では、元のボールが見つからない、もしくは確認できなかったとしてもアンプレヤブル宣言をできる点が特徴です。
前のショットが良かった場合や、元の場所からなら安全にプレーできる場合に有効な選択肢となります。ただし、元の位置まで戻る必要があるため、プレーのペースが遅くなる可能性があることは考慮しておきましょう。
2. ラテラル救済(ボールから2クラブレングス以内にドロップ)(1打罰)
2つ目の選択肢は、ボールの位置から2クラブレングス以内の場所にドロップする方法です。これを「ラテラル救済」と呼びます。
ただし、ボールから2クラブレングス以内であっても、以下の2つの制限がある点に注意が必要です。
-
元のボールの位置からホールに近づいてはいけない
-
ラテラル救済エリアにコースエリアが複数ある場合、救済エリアにドロップした際に最初に触れたコースの救済エリアに止まらなければならない

アンプレヤブルのラテラル救済の様子
一般的には、この救済方法が最もホールから遠ざからない方法となります。なお、2クラブレングスの測定は「パターを除く最も長いクラブ」で行うため、通常はドライバーを使用します。
障害物の近くでボールが止まっていて、その場所から少し離れれば問題なくプレーできる場合に有効な選択肢です。
3. 後方線上救済(ボールとホールを結んだ後方線上にドロップ)(1打罰)
3つ目の処置は、ボールの位置とホールを結ぶ後方線上にドロップする方法です。
ホールとボールを結んだ後方線上にボールをドロップして、最初に着地した点が基点となり、そこから1クラブレングス以内が救済エリアとなります。ボールの後方線上であれば、後ろに下がる距離に制限はありません。
ただし、以下の2つの制限がある点に留意してください。
-
元のボールの位置からホールに近づいてはいけない
-
ドロップしたボールが最初に触れたコースエリアでなければならない
ラテラル救済エリアの処置よりもホールから遠ざかりますが、ライが良い地点やフルショットで打てる地点にドロップできる点が特徴です。
特に木々に囲まれた場所や、深いラフからの脱出が難しい場合に、クリーンな場所からプレーを再開できるこの選択肢は非常に有効です。
バンカーからのアンプレヤブル:特別なルール
バンカー内でアンプレヤブルを宣言する場合、通常の3つの選択肢に加えて、特別なルールが適用されます。
バンカー内であってもアンプレヤブル宣言が可能です。ただし、ラテラル救済(2クラブレングス以内)や後方線上救済を選択する場合は、バンカー内にドロップしてバンカー内に止まらなければなりません。
一方で「直前にボールを打った地点に戻る」を選択する場合は、バンカーの外でもドロップできます。

バンカーからのアンプレヤブル救済オプションの図解
2019年に改正されたルールでは、バンカーからの救済オプションが追加されました。それは「2打罰を払ってバンカーの外に出る」という選択肢です。
具体的には、2打罰を払い、ボールとピンを結ぶ線上でバンカーの後方の地点にドロップすることができます。
あごの高いバンカーの淵にボールが刺さった場合に、アンプレヤブルでバンカー内にドロップしても、次のショットで高いあごを超える自信がない場合には有効な救済です。
また、バンカーショットが苦手な初心者は、バンカーでの大たたきを避けるための救済となります。
どうでしょう? 2打罰は大きいと感じますか?
確かに2打のペナルティは大きいですが、バンカーから何度も打ってしまい、結果的に3打以上かかってしまうよりは、2打罰を払ってクリーンな場所からプレーを再開した方が良いケースも多いのです。
2023年のルール改定:後方線上救済の変更点
2023年に改定されたゴルフルールで、後方線上のドロップ方法が一部変更されました。この変更により、プレーヤーにとってより柔軟な救済が可能になりました。
従来は、ボールとホールを結んだ後方線上で基点を定め、その基点から1クラブレングス以内の救済エリアにドロップする必要がありました。2023年の改定では、球を後方線上にドロップし、球はどの方向にも1クラブレングスまで転がることができるようになりました。ただし、元のボールの位置からホールに近づいてはならないという制約は従来通り維持されています。

2023年のゴルフルール改定による後方線上救済の変更点
この変更により、後方線上からより適切な場所にボールを配置することが可能になり、プレーのスピードアップにも貢献しています。特にバンカー内や深いラフなど、細かい調整が必要な場面で役立つ改定となりました。
この改定は、プレーのスピードアップにも貢献しています。基点を厳密に決める必要がなくなったことで、ドロップの手続きがよりスムーズになりました。
ゴルフのルールは時代とともに進化しています。プレーヤーの利便性を高めつつ、ゲームの本質を守るための改定が定期的に行われているのです。
アンプレヤブルの注意点:正しい手順を守ろう
アンプレヤブルは、状況に応じてプレーヤーが自己判断で適用できる便利なルールですが、正しい手順を守らないとペナルティが課される可能性があります。以下の注意点をしっかりと押さえておきましょう。
必ず他プレーヤーへアンプレヤブルを宣言する
アンプレヤブルを選ぶ際に最も重要なのは、必ず他プレーヤーへアンプレヤブルを宣言することです。
ボールがプレーできないと判断した場合、まずは宣言したうえで適切な処置を行う必要があります。宣言をせずに処置を行うと、ルールに則ったものとは認められず、ペナルティが課される可能性があります。

ペナルティを避けるためにも、アンプレヤブルを選択する際は必ず宣言を行うことを忘れないようにしましょう。
「このボールはアンプレヤブルとします」と明確に伝えることで、他のプレーヤーにも自分の意図が伝わり、スムーズなプレー進行につながります。
ペナルティエリアからの宣言はできない
アンプレヤブルは、ペナルティエリア内では適用できません。
ペナルティエリアは池・川などの水域を含むエリアで、特別なルールが適用される場所です。アンプレヤブルを選んだとしても無効となり、ペナルティエリアからの救済方法を選ぶ必要があります。
ペナルティエリア特有の救済方法を利用することになるため、適切な対応をするために正しく理解しておきましょう。
ペナルティエリアとアンプレヤブルの違いを混同すると、不必要なペナルティを受けることになりかねません。コース上のどのエリアがペナルティエリアなのかを事前に確認しておくことも大切です。
アンプレヤブルに関する心温まるエピソード
アンプレヤブルは、プレーヤーの自己判断で宣言ができる処置ですが、とある事情でプレーができる状況にも関わらずアンプレヤブルを宣言したプロゴルファーのエピソードがあります。
そのゴルファーは「ハリー・ブラッドショー」と呼ばれるゴルファーで、1940〜50年代に活躍したアイルランド出身の選手です。

ブラッドショーがメジャー大会の1つである「全英オープン」にて、とあるホールのセカンド地点でアンプレヤブルを宣言し、最終的に1打差で優勝を逃してしまいました。
このアンプレヤブルの処置を不思議に思った新聞記者が「なぜあのときアンプレヤブルを宣言したのか?」と尋ねたところ、「ライが悪かった」とのこと。
それでも疑問を払拭できない記者が、アンプレヤブルを宣言した場所を見てみると、綺麗な花がたくさん咲いている場所だったことが分かりました。
記者がもう一度同じ質問を投げかけたところ、ブラッドショーはこう答えたそうです。
「花よりショットのほうが大切だとは思えなかった。ちなみに、アンプレヤブルの宣言というものは、ゴルファーの選択に任されているんだよ」
アンプレヤブルが、プレーヤーの意思次第でどこでも宣言できるルールであることがよくわかるエピソードではないでしょうか。
このエピソードは、ゴルフというスポーツの精神性や、プレーヤーの判断を尊重する文化を象徴しています。時にはスコアよりも大切なものがあることを教えてくれる素敵な話です。
アンプレヤブルは戦略的な選択肢である
アンプレヤブルは単なる救済措置ではなく、戦略的な選択肢としても活用できます。
ボールが打てない状況に遭遇した場合、アンプレヤブルを宣言することで、無駄なミスを防ぐことが可能です。無理にショットを試みるより、状況を冷静に見極め、適切な処置を選択することが重要です。

例えば、木の根元にボールが止まっていて、何とか打てそうだけど確実性が低い場合、無理に打って大叩きするよりも、1打のペナルティを払ってクリーンな場所からプレーした方が結果的にスコアを守れることが多いのです。
ゴルフは「どれだけ少ない打数でホールアウトするか」を競うスポーツです。1打のペナルティを払っても、その後のリカバリーでトータルスコアを守れるなら、それは賢明な選択と言えるでしょう。
あなたも次回のラウンドで困難な状況に遭遇したら、「無理に打つべきか、アンプレヤブルを選ぶべきか」を冷静に判断してみてください。
アンプレヤブルを活用することで、リスクを減らしてスコアを守りましょう。時には「引く」勇気も、ゴルフでは重要な要素なのです。
まとめ:アンプレヤブルの正しい判断と活用法

アンプレヤブルは、ゴルファーが「打てない」と判断した場合に、罰打を払って救済を受けられる重要なルールです。木の根元や深いラフ、バックスイングが取れない状況など、様々な場面で活用できます。
救済処置としては、①元の位置に戻る、②2クラブレングス以内にドロップ、③後方線上にドロップの3つの選択肢があり、バンカー内では特別なルールが適用されます。2019年の改定では2打罰でバンカー外に出るオプションが追加され、2023年には後方線上救済の柔軟性が増しました。
アンプレヤブルを適用する際は、必ず他のプレーヤーに宣言することを忘れず、ペナルティエリア内では適用できないことにも注意しましょう。
最後に、アンプレヤブルは単なる救済措置ではなく、スコアを守るための戦略的な選択肢でもあります。状況を冷静に見極め、時には「引く」勇気を持つことで、より良いゴルフライフを楽しみましょう。
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