アンプレヤブルとは?ゴルフにおける救済ルールの基本
ゴルフコースで「これは無理だ…」と思ったことはありませんか?
木の根元に球が挟まり、バックスイングすらできない。バンカーの急なアゴに球が刺さり、前に出すことさえ困難。そんな絶望的な状況でも、あなたには「アンプレヤブル」という救済の権利があります。
アンプレヤブルとは、プレーヤー自身が「打てない」と判断したときに、罰打を払ってボールを適切な位置に移動できるゴルフルールです。「打とうと思えば打てるけど、ケガやクラブの損傷が心配」「普通に打つと何打も費やしてしまいそう」といった場面で活用できます。
このルールはゴルフ規則書にもしっかり記載されている公式ルールです。「マナー違反にならないか」と心配する必要はまったくありません。むしろ、無理に打とうとして何打も費やすよりも、1打の罰を受け入れて次に進む方が、プレーのペースを保ち、周囲への配慮にもなります。
アンプレヤブルは単なる「逃げ道」ではなく、スコアを守るための戦略的な選択肢なのです。

バンカーでアンプレヤブル宣言!賢い救済処置と戦略的選択
アンプレヤブルが適用される主な状況とは?

アンプレヤブルは、コース上のどこでも宣言できます。ただし、ペナルティエリア内では適用できないので注意が必要です。
では、どんな状況でアンプレヤブルを宣言すべきなのでしょうか? 主に以下のようなケースで活用されることが多いです。
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木の根元や枝の間にボールが止まった場合
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深いラフの中に埋もれてしまった場合
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バックスイングが物理的に取れない状況
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バンカーのアゴに球が刺さってしまった場合
これらの状況では、無理にスイングするとクラブが折れたり、体を痛めたりするリスクがあります。また、何度も打たないと脱出できない可能性もあるでしょう。
無理に打つことでプレーが遅れ、後続の組に迷惑をかけることも考えられます。そんなときこそ、アンプレヤブルの出番です。
重要なのは、アンプレヤブルは「絶対に打てない」状態でなくても適用できるということ。あくまでプレーヤー自身の判断で宣言できるルールなのです。
ゴルフは自分との戦い。無理は禁物です。
ただし、明らかに打てる状況なのに、単に有利になるためだけにアンプレヤブルを宣言するのはマナー違反と受け取られる可能性があります。ゴルフの精神に則った判断を心がけましょう。
バンカー内でのアンプレヤブル:特別なルールと選択肢

バンカーは多くのゴルファーを悩ませる難所です。特に高いアゴがあるバンカーや、ボールが深く埋まってしまった場合は、一発で脱出するのが困難なことも。
バンカー内でもアンプレヤブルは適用可能です。ただし、通常のアンプレヤブルとは少し異なるルールが適用されます。
バンカー内でアンプレヤブルを宣言した場合、選べる救済処置は以下の通りです。
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元の位置に戻る(1打罰)
最後にショットした場所に戻り、そこから打ち直します。 -
ボールとホールを結んだ後方線上(バンカー内)にドロップ(1打罰)
ボールとピンを結んだ線上で、バンカー内の任意の地点にドロップします。 -
ピンに近づかない2クラブレングス以内のバンカー内にドロップ(1打罰)
元のボール位置から2クラブレングス以内で、ホールに近づかない場所にドロップします。 -
ボールとホールを結んだ後方線上(バンカーの外)にドロップ(2打罰)
2019年のルール改正で追加された選択肢です。2打罰を払うことで、バンカーの外に出ることができます。
最後の選択肢は、2打罰と引き換えにバンカーから完全に脱出できる救済措置です。バンカーが極度に苦手な方や、何度も打ってしまいそうな難しいバンカーでは、この選択肢が有効かもしれません。
どうですか? バンカーに対する恐怖心が少し和らぎませんか?

バンカーに苦手意識を持つ方にとって、この「2打罰でバンカー外に出る」選択肢は大きな救いになります。プロでさえ一発で出せないような難しいバンカーに直面したとき、この選択肢を知っているかどうかで、そのホールのスコアが大きく変わることもあるでしょう。
アンプレヤブルの救済処置:詳細解説
アンプレヤブルを宣言したら、次はどのような救済処置を選ぶかが重要です。状況に応じて最適な選択肢を選びましょう。
1. 元の位置に戻る(1打罰)
これは「ストロークと距離の救済」とも呼ばれます。最後にショットした場所に戻って、そこから打ち直す方法です。
たとえば、2打目として打ったボールがアンプレヤブルな状況になった場合、2打目を打った地点に戻り、1打罰を加えて4打目として打つことになります。
この選択肢は、他の救済方法よりも不利になる可能性が高いため、実際にはあまり選ばれません。ただし、他の選択肢では状況が改善しない場合には検討する価値があります。
2. 後方線上の救済(1打罰)

ボールとホール(ピン)を結んだ線上で、ボールよりも後方の任意の地点にドロップする方法です。
この救済方法のポイントは、後方であればどれだけ遠ざかってもよいということ。たとえば、ピンまで50ヤードという中途半端な距離で、しかも池越えが必要な場所でアンプレヤブルを宣言する場合は、あえてピンから遠ざかって、フルショットで打てる得意な距離(100ヤード地点など)にドロップした方が結果的に良いスコアになることもあります。
2023年のルール改定により、後方線上のドロップ方法がより柔軟になりました。従来はボールとホールを結んだ後方線上で基点を作り、その後方にドロップする必要がありましたが、改定後は基点を作る必要がなくなり、ドロップ地点から1クラブレングス以内であれば、ホールに近づいても問題なくなりました。
3. ラテラル救済(1打罰)
アンプレヤブルの処置で最も一般的なのがこの「ラテラル救済」です。ラテラルとは「横の」という意味で、元のボールから2クラブレングス(最も長いクラブ2本分)の範囲で、ホールに近づかない位置にドロップすることができます。
ホールから遠ざかりたくない場合は、この救済を選ぶのが最適です。

どの処置も1打罰(バンカー外に出す場合は2打罰)がつくので痛いですが、アンプレヤブルを使わずに無理して打つと、もっと多くの打数を費やしてしまう可能性もあります。
1打では脱出できないと思ったら、積極的にアンプレヤブルを宣言しましょう。それがスコアを守る賢明な判断です。
アンプレヤブル宣言時の注意点

アンプレヤブルは便利なルールですが、いくつか重要な注意点があります。これらを知らずに処置を行うと、思わぬペナルティを受けることになりかねません。
必ず他のプレーヤーへ宣言する
アンプレヤブルを選ぶ際に最も重要なのは、必ず他のプレーヤーへアンプレヤブルを宣言することです。
ボールがプレーできないと判断した場合、まずは「アンプレヤブルを取ります」と宣言したうえで適切な処置を行う必要があります。宣言をせずに処置を行うと、ルールに則ったものとは認められず、ペナルティが課される可能性があります。
ペナルティを避けるためにも、アンプレヤブルを選択する際は必ず宣言を行うことを忘れないようにしましょう。
ペナルティエリアでは適用できない
アンプレヤブルは、ペナルティエリア内では適用できません。
ペナルティエリアとは、池や川などの水域、赤杭や黄杭で区画された特別なエリアのことです。ペナルティエリア内でボールが打てない状況になった場合は、アンプレヤブルではなく、ペナルティエリア特有の救済方法を選ぶ必要があります。
アンプレヤブルを宣言しても無効となり、適切な処置を行わないとペナルティが課されることになるので注意しましょう。
救済後にボールが元の位置に戻ってしまったら?
ラテラル救済(2クラブレングス以内)を選んだ場合、ドロップしたボールが転がって元の位置に戻ってしまうことがあります。
せっかくアンプレヤブル宣言してドロップしても元の位置に戻ってしまった場合、再度アンプレヤブルを宣言して処置を行うと、さらに1打罰が加わってしまいます。
このような事態を避けるためにも、ドロップする場所の地形をよく確認し、ボールが転がりにくい場所を選ぶことが大切です。
アンプレヤブルに関する心温まるエピソード

アンプレヤブルは、プレーヤーの自己判断で宣言できる処置ですが、とある事情でプレーができる状況にもかかわらずアンプレヤブルを宣言したプロゴルファーのエピソードがあります。
そのゴルファーは「ハリー・ブラッドショー」と呼ばれるゴルファーで、1940〜50年代に活躍したアイルランド出身の選手です。
ブラッドショーがメジャー大会の1つである「全英オープン」にて、とあるホールのセカンド地点でアンプレヤブルを宣言し、最終的に1打差で優勝を逃してしまいました。
このアンプレヤブルの処置を不思議に思った新聞記者が「なぜあのときアンプレヤブルを宣言したのか?」と尋ねたところ、「ライが悪かった」とのこと。
それでも疑問を払拭できない記者がアンプレヤブルを宣言した場所を見てみると、綺麗な花がたくさん咲いている場所だったことが分かりました。
記者がもう一度同じ質問を投げかけたところ、ブラッドショーはこう答えました。
「花よりショットのほうが大切だとは思えなかった。ちなみに、アンプレヤブルの宣言というものは、ゴルファーの選択に任されているんだよ」
アンプレヤブルが、プレーヤーの意思次第でどこでも宣言できるルールであることがよくわかるエピソードではないでしょうか。
このエピソードは、ゴルフがただスコアを競うだけでなく、自然を尊重し、美しさを大切にするスポーツであることを教えてくれます。
アンプレヤブルは戦略的な選択肢

アンプレヤブルは単なる救済措置ではなく、戦略的な選択肢としても活用できます。
ボールが打てない状況に遭遇した場合、無理にショットを試みるより、アンプレヤブルを宣言することで、無駄なミスを防ぐことが可能です。1打の罰を受け入れることで、さらに大きな損失を避けられるのです。
特にバンカーが苦手な方は、バンカー内でアンプレヤブルを宣言し、2打罰を払ってでもバンカーの外に出すという選択肢があることを覚えておくと、精神的な余裕が生まれるでしょう。
ゴルフにおいては、リスク管理と戦略的判断が重要です。無理をして大たたきするよりも、1打の罰を受け入れて次に進む方が賢明な場合も多いのです。
状況を冷静に見極め、適切な処置を選択することで、スコアを守りましょう。
アンプレヤブルというルールを知っているだけで、コース戦略の幅が広がります。あなたも次回のラウンドで、必要に応じて活用してみてはいかがでしょうか?
まとめ:アンプレヤブルの賢い活用法

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アンプレヤブルとは、プレーヤー自身が「打てない」と判断したときに、罰打を払ってボールを適切な位置に移動できるルール
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バンカー以外では1打罰、バンカーから外に出す場合は2打罰が適用される
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救済処置には、元の位置に戻る、2クラブレングス以内にドロップ、後方線上にドロップなどの選択肢がある
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アンプレヤブルを適用する際は必ず他プレーヤーへ宣言する必要がある
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ペナルティエリア内ではアンプレヤブルは適用できない
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無理にショットを試みるよりも状況を冷静に見極め、戦略的な選択肢として活用しよう
ゴルフは長い戦いです。1ホールで無理をして大たたきするより、賢く1打の罰を受け入れて次に進む方が、トータルスコアを守ることにつながります。アンプレヤブルというルールを味方につけて、スマートなゴルフを楽しみましょう。
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