【実例付き】ゴルフのノータッチ違反とペナルティ｜プロの失格事例から学ぶ

【実例付き】ゴルフのノータッチ違反とペナルティ｜プロの失格事例から学ぶ

「え！？それもダメなの？」

ゴルフコースでルール違反に気づかず、思わぬペナルティを受けた経験はありませんか？特に「ノータッチ」に関するルールは、世界トップレベルのプロゴルファーでさえ犯してしまう、ゴルフ界で最も注意が必要なルールの一つです。

実際に2021年のマスターズトーナメントでは、メキシコ代表のアブラム・アンセル選手が15番ホールのバンカーショットで、バックスイング時に気づかずクラブが砂に触れてしまい、2罰打を科されるという事態が発生しました。さらに、この違反はプレー後の映像確認で発覚したため、アンセル選手は当日のスコアが修正される形となり、大きな注目を集めました。

本記事では、ゴルフにおける「ノータッチ」の意味から、実際のプロの失格・ペナルティ事例、そして私たちアマチュアゴルファーが今後のラウンドで活用できる実践的な対処法まで、最新ルールを踏まえて徹底解説します。

ゴルフにおける「ノータッチ」とは？理解すべき2つの重要な意味

ゴルフ用語「ノータッチ」には、プレー中に頻繁に遭遇する2つの異なる意味があります。これらを正確に理解することは、スコアを守るためだけでなく、フェアプレーの精神を尊重し、2026年以降も自信を持ってプレーするうえで非常に重要です。

1. 「球はあるがままの状態でプレー」というゴルフの基本原則

「ノータッチ」の第一の意味は、ゴルフ規則13の「球はあるがままの状態でプレー（Ball Played as It Lies）」という原則に基づいています。これは「サマールール」とも呼ばれ、ボールがどんな状況にあっても、触ったり動かしたりせずに、そのままの状態でプレーすることを求める根本的なルールです。

公式競技では基本的にこのルールが適用され、例えばラフに入ったボールが深い芝の中に埋まっていても、そのままの状態で打たなければなりません。このルールは、ゴルフの本質である「フェアプレー」の精神を体現するものであり、全てのゴルファーが同じ条件下でプレーすることを保証します。

対照的に、ボールを動かせるルールは「プリファードライ」や「ウィンタールール」と呼ばれ、主に冬場や芝の状態が悪いときに適用されます。これらのルールでは、フェアウェイ上のボールを1クラブレングス以内で拾い上げて置き直すことが許されています。

2. ハザードギリギリを通過する幸運な状態

「ノータッチ」の第二の意味は、ゴルフ中継でよく耳にする用法で、ゴルフボールがバンカーや池などのペナルティエリアに直接触れることなく、その縁ギリギリを通過する状態を指します。

例えば、「今のショット、バンカーノータッチでセーフ！」という実況は、ボールがバンカーに入らずに縁をかすめて通過したことを意味します。これはプレイヤーにとって幸運な状況であり、ペナルティエリアに入ってしまった場合と比べて、次のショットがはるかに容易になります。

この「ギリギリセーフ」という意味での「ノータッチ」は、ゴルフの醍醐味の一つでもあります。わずか数センチの差が、スコアに大きく影響するのです。2026年以降もこの用法は変わらず、プレーヤーの技術とコースマネジメント能力を試す重要な要素として存在し続けるでしょう。

プロゴルファーの戦略やルールについてさらに詳しく知りたい方は、【初心者必見】アンプレヤブルのゴルフルールをやさしく解説もご参照ください。

プロゴルファーも犯した！ノータッチ違反の衝撃事例

ノータッチルールは、世界最高峰のプロゴルファーでさえも犯してしまうことがあります。ここでは、実際にプロツアーで起きた衝撃的な違反事例を詳しく紹介します。これらの事例から学ぶことで、私たちアマチュアゴルファーも同様のミスを避けることができます。

2021年マスターズでの2打罰事件：アブラム・アンセル選手

2021年のマスターズトーナメント初日、当時世界ランク上位で活躍していたメキシコのアブラム・アンセル選手は、15番ホールでのプレー中にグリーンサイドバンカーに入ってしまいました。そこから3打目を打つ際、バックスイングで気づかずクラブヘッドが砂に触れてしまったのです。

この違反の特殊な点は、映像確認による発覚でした。 アンセル選手がスコアカードにサインをしてスコアリングエリアを出た後、委員会によって規則12.2b(1)違反の可能性が指摘され、映像が確認されました。オーガスタナショナルゴルフクラブは声明で「砂を触ったことは裸眼でも分かると判断された」と発表しています。

結果として2罰打が科され、アンセル選手は初日を1オーバー「71」ではなく、3オーバー52位タイに修正されることとなりました。彼は即座にSNSで「偶然にバックスイングで砂に触れたことで2罰打が課された。かなりショックだが、明日取り返すために頑張る」とコメントしました。

最終的に彼はトーナメントをミスカットで終えることになり、この1つのミスが大会全体の結果を左右したのです。

PGAツアーでの失格事例：スコアカード提出の重要性

別の事例では、2019年のPGAツアー大会で、あるプロゴルファーがペナルティエリア内のボールをプレーする前に、クラブで地面に触れてしまいました。これもノータッチ違反として本来2罰打が科せられるところ、本人がそれを知らずに正しいスコアを申告せずにスコアカードを提出してしまったため、「不正確なスコアカード提出」という別のルール違反となり、失格処分となりました。

このケースが示すのは、ペナルティを受けたことに気づかないままプレーを続けると、さらに重い罰則を受ける可能性があるということです。疑わしい場面では必ず同伴者や競技委員に確認することの重要性を教えてくれます。

これらの事例は、ノータッチルールの重要性と、違反した場合の厳しい結果を物語っています。プロでさえミスを犯すルールだからこそ、アマチュアゴルファーは特に注意が必要なのです。

ノータッチ違反の具体的なケースとペナルティ

ノータッチ違反は様々な状況で発生します。どのような行為が違反となり、どのようなペナルティが科せられるのか、最新ルールを踏まえて具体的に見ていきましょう。

バンカー内でのノータッチ違反

バンカー内でのノータッチ違反は最も一般的で、アマチュアゴルファーが最も注意すべきポイントです。具体的には以下のような行為が違反となります：

ショットの前にボールの前後でクラブをソールする（地面に接触させる）
練習スイングで砂に触れる
バックスイングの時に砂に触れる
砂の状態をテストするために触る

これらの違反には、マッチプレーではそのホールの喪失、ストロークプレーでは2罰打が科せられます。

ただし、2019年のルール改正により重要な変更がありました。 バンカー内でのルールは若干緩和され、以下の行為は無罰となっています：

ルース・インペディメント（小石、落ち葉、枝など）を取り除くこと
クラブや用具をバンカー内に置くこと
休むためにクラブに寄りかかる、転ぶのを防ぐなど
イライラしたり怒ったりして砂を叩くこと（ただしマナー的には問題あり）

この改正により、バンカー内でのプレーが以前より少し楽になりましたが、依然として「砂の状態をテストする行為」は厳格に禁止されています。

ペナルティエリア内でのノータッチ違反

2019年のルール改正で「ハザード」から「ペナルティエリア」に名称が変更されましたが、基本的なルールは継続しています。ペナルティエリア内でも以下が禁止されています：

ショット前にクラブが地面や水に触れる
ペナルティエリア内の状態をテストする
ボールの前後でクラブをソールする

これらの違反にも2罰打が科せられます。2019年のルール改正後は、ペナルティエリア内でもルース・インペディメントを取り除くことが許可されましたが、クラブを地面に接触させることは依然として違反です。

詳しいペナルティエリアのルールについては、ゴルフルール2019年改正の衝撃！「ハザード」から「ペナルティエリア」への移行で得する打ち方もご覧ください。

その他のノータッチ違反ケース

以下のような状況も注意が必要です：

アドレス時に誤ってボールを動かしてしまう（1罰打でリプレース）
プレー中にボールが動いている最中に触れる（2罰打）
他のプレーヤーのボールに影響を与える行為（2罰打）
グリーン外でクラブをソールしてボールが動く（1罰打でリプレース）

特にアドレス時のボール移動は、アマチュアゴルファーが最も犯しやすいミスの一つです。風の強い日や、傾斜のきつい場所では特に注意が必要です。

サマールールとウィンタールール：状況に応じたノータッチの適用

ゴルフコースの状態や季節によって、ノータッチルールの適用は変わってきます。サマールールとウィンタールールの違いを理解しておくことで、適切なプレーが可能になります。

サマールール（ノータッチ）の基本

サマールールは、一般的に芝の状態が良い時期に適用されます。以下がその特徴です：

ボールはあるがままの状態でプレーする（原則として動かせない）
ラフに入ったボールも動かさずにプレー
公式競技では基本的にこのルールが採用される
フェアプレーの精神を重視する本来のゴルフルール

サマールールの下では、いかなる状況でもボールを動かすことは許されません。これにより、全てのプレーヤーが同じ条件でプレーすることが保証されます。2026年以降の公式競技でも、この原則は変わらず適用され続けるでしょう。

ウィンタールール（プリファードライ）の特徴

一方、ウィンタールールは主に冬場や芝の状態が悪い時期に適用されます：

フェアウェイ上のボールは、1クラブレングス以内で拾い上げて置き直し可能
芝生を保護するための措置
プレーの円滑化を図る目的もある
主に練習ラウンドやプライベートコンペで採用されることが多い
「6インチプレース」とも呼ばれる

ウィンタールールは、厳密には「プリファードライ」と呼ばれることもあります。このルールの下では、フェアウェイ上のボールを拾い上げ、より有利な位置（ただし1クラブレングス以内でホールに近づかない）に置き直すことが許されています。

季節やコース状態による使い分け

サマールールとウィンタールールの適用は、以下のような要素によって決まります：

季節（春から秋はサマールール、晩秋から冬はウィンタールールが一般的）
芝の状態（良好ならサマールール、不良ならウィンタールール）
大会の性質（公式競技はサマールール、友人同士のラウンドは状況に応じて）
コース管理者の判断（コースコンディションに基づく）
ローカルルールの設定（各ゴルフ場の方針による）

プレー前には必ずスタート室やキャディマスター室でローカルルールを確認し、どちらのルールが適用されているかを把握しておくことが重要です。これにより、不要なペナルティを避けることができます。

2025年後半から2026年にかけての傾向として、環境保全や芝の保護の観点から、より多くのゴルフ場でウィンタールールの適用期間が見直される可能性があります。気候変動の影響で冬場の芝の状態も変化しているため、プレー前の確認がこれまで以上に重要になるでしょう。

ゴルフルールの変遷について詳しくは、ゴルフルール改正で変わった3つの重要ポイント完全ガイドをご覧ください。

アマチュアゴルファーのためのノータッチ対策：失敗しないコツ

プロでさえ犯してしまうノータッチ違反ですが、アマチュアゴルファーが気をつけるべきポイントと具体的な対策を紹介します。これらを実践することで、2026年以降も自信を持ってプレーできるようになります。

バンカーショットでの実践的な注意点

バンカーショットは特に注意が必要です。以下のポイントを守ることで、不要なペナルティを避けることができます：

バンカーに入る前に、必要なクラブを2〜3本持参する
- 往復の手間を省き、迷いを減らす
- サンドウェッジ、ピッチングウェッジ、場合によってはロブウェッジ
練習スイングは砂に触れないよう空振りで行う
- クラブヘッドと砂の間に10センチ以上の余裕を持つ
- バックスイングでも砂に触れないよう注意
クラブを砂の上に直接置かない
- バンカーの外か、バンカーのフチに置く
- 複数クラブを持参した場合も同様
バンカー内では余計な動きを最小限に抑える
- スタンスを取る際も、砂の状態を確認するような動きは避ける
- 必要最小限の足の潜り込みのみ
砂に触れていいケースを理解する
- ルース・インペディメント（小石、落ち葉）の除去時
- 転倒を防ぐため、バランスを取るため
- クラブを杖代わりに使う時

バンカーショットの前には「クラブを砂に触れさせない」ことを常に意識することが大切です。特に練習スイングは空振りで行い、絶対に砂に触れないようにしましょう。

ペナルティエリアでのプレー方法

ペナルティエリア内でプレーする場合の注意点：

クラブを地面や水に触れさせない
- アドレス時もクラブは浮かせた状態
- 素振りでも地面に触れないよう注意
スタンスを取る際も地面の状態をテストしない
- 足で必要以上に地面を押さない
- 傾斜や硬さを確認する動作は避ける
必要に応じて、ペナルティを受けて救済を受けることも検討する
- 1罰打で後方線上の救済
- 赤杭の場合は横方向の救済も選択可能
ボールが見つかりにくい場合は、早めに時間切れを想定した準備をする
- 3分以内にボールを見つける必要がある
- 見つからない場合の対応を事前に考えておく

ペナルティエリア内でのプレーは、技術的な難しさだけでなく、ルール上の制約も大きいです。状況によっては、1罰打を受けて救済を受ける方が賢明な場合もあります。スコアを守るためには、無理をしない判断も重要です。

ペナルティエリアからの救済方法について詳しくは、もう迷わない！ゴルフのペナルティエリアからの救済方法3ステップ完全ガイドをご参照ください。

実践的なノータッチルール対策

以下の実践的なアドバイスを日常のプレーに取り入れてください：

プレー前に最新のゴルフルールを確認する習慣をつける
- JGAやR&Aの公式アプリを活用
- 年度ごとのルール改正点をチェック
迷った場合は、同伴者やマーシャルに確認する
- 恥ずかしがらずに質問する
- 確認することでペナルティを避けられる
公式競技では特に慎重にプレーする
- プライベートラウンド以上に注意深く
- 疑わしい場面では暫定球を検討
ルールブックやゴルフルールアプリを常に携帯する
- スマートフォンでいつでも確認可能
- オフラインでも使えるアプリを選ぶ
「触れるかどうか迷ったら触れない」の原則を守る
- 最も安全な判断基準
- 迷った時点で触れないことを選択

ゴルフルールは定期的に改定されるため、最新の情報を把握しておくことが重要です。また、同伴者との間でルールについて事前に確認しておくことで、プレー中のトラブルを防ぐことができます。

暫定球の正しい使い方については、【プロが解説】ゴルフの暫定球とプロビジョナル、知らないと恥をかく3つのルールもあわせてご覧ください。

ノータッチルールが戦略的に有利になるケース

一見すると制約の多いノータッチルールですが、状況によっては戦略的に有利になる場合もあります。ルールを深く理解することで、より賢いコースマネジメントが可能になります。

リスク回避の賢い選択

以下のような状況では、ノータッチルールを理解していることが戦略的アドバンテージになります：

ペナルティエリア内のボールが、比較的良い状態で打てる場合
- そのまま打つことでペナルティなしで続行できる
- 救済を受けるより有利な位置関係の場合もある
バンカーのエッジギリギリにボールが止まった場合の判断
- 無理に打とうとして大きなミスをするより、アンプレヤブルを選択
- 2罰打でバンカー外から打つ方が結果的に有利な場合も
ハザード近くでのプレーにおける心理的優位性
- ルールを熟知していることで、落ち着いたプレーができる
- 同伴者への配慮も含めた総合的な判断が可能
不利な状況での最適な選択肢の判断
- 無理に続けるか、救済を受けるかの冷静な判断
- スコアメイクの観点からの戦略的思考

例えば、ペナルティエリア内の球でも、グリーンが近く、傾斜も緩やかで、そのまま打てばグリーンオンも狙えるような状況では、ペナルティを受けて救済を受けるよりも、そのままプレーした方が有利な場合があります。2026年以降も、こうした戦略的判断能力がスコアメイクの鍵となるでしょう。

プロから学ぶノータッチ戦略

プロゴルファーは、ノータッチルールを熟知した上で、最適な戦略を選択しています：

バンカーショットの練習方法（砂に触れない練習スイング）
- 実践的な素振りで砂との距離感を養う
- メンタル面での準備も重要
ハザード近くでのリスク管理技術
- 攻めるか守るかの判断基準
- 状況に応じた柔軟な対応
ルールを味方につけたコース戦略
- 2019年改正後の新しいオプションの活用
- バンカー外からの2罰打救済の賢い使い方
メンタル面での準備（ルールを意識しすぎない心構え）
- 基本を押さえた上でのリラックスしたプレー
- 過度な緊張は避ける

プロゴルファーは、ルールを制約ではなく、ゲームの一部として捉えています。彼らのプレーを観察することで、ノータッチルールの下での効果的なプレー方法を学ぶことができます。

最新のリリーフエリアについては、ゴルフルール改正で変わった！プロが教えるリリーフエリアの測り方と活用法で詳しく解説しています。

Q4. バンカー内の小石を取り除く際、砂に手が触れましたが、これはペナルティですか？

A. いいえ、ペナルティにはなりません。2019年のルール改正により、ルース・インペディメント（小石、落ち葉など）を取り除く際に合理的な範囲で砂に触れることは許されています。ただし、この行為を利用して砂の状態をテストしたとみなされる場合は2罰打となる可能性があります。

Q5. 練習ラウンドではノータッチルールを気にしなくてもいいですか？

A. 練習ラウンドであっても、ゴルフの基本ルールを守ることが推奨されます。ルールを守る習慣をつけることで、本番の競技やコンペで不要なペナルティを避けることができます。ただし、技術向上のための練習として、あえてさまざまな状況でボールを打つことは有益です。プライベートラウンドであれば、同伴者の了解を得た上で練習的なプレーをすることも可能です。